ギャラリーレポート

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建築家/鶴田 二郎

鶴田二郎アトリエ 一級建築士事務所

ペット(猫)と仲良く暮らす家

かわいいペットと共に暮らす。さて家づくりを考えるとき、人間中心の住空間で良いのでしょうか?できるだけ愛する彼らにも気分良く生活してもらいたいのが親心というものですね。
今回は、建築家 鶴田二郎氏が手掛けた「ペット(猫)と仲良く暮らす家」をご紹介いたします。

家づくりのイメージ

若い夫婦2人と猫2匹が共に生活する小さな家を造りました。場所は都心の外れの山の手にある小さな敷地です。
敷地内の南側に大きな斜面があり、東西に走る2本の道路に挟まれています。隣には緑あふれる公園がありました。画一的な敷地条件と照らし合わせるととても特異に思えましたが、周囲の環境も含め住宅を建築するにはたいへん魅力的な場所に思えました。「広い庭と建物を平面的に並べるようなプランニングはこの敷地の性格に適していないな・・・」と思ったので、敷地内に目一杯に建物を配置し、緑いっぱいの公園の景色を室内に取り込みながら、住空間と景色、外部空間が上方へするすると繋がって、ぐんぐん上へ登って行きたくなるようなイメージを想像しながら計画しました。

猫たちの行動って

施主から要望された様々な条件のひとつに、“猫と暮らすこと”が挙げられました。私自身も2匹の猫たちと生活しています。そこで、あらためて猫の行動パターンを観察してみる事にしました。すると、イメージしていた垂直へ繋がっていく空間の構成が、猫の行動パターンにとてもマッチするのではないかと考えに至りました。
例えば人、犬などは整備された道に沿ってまっすぐに進むという“平面的行動”をとるのが普通です。しかし、猫の場合はその整備された道を直角に横切ったり、それから塀によじ登ったりと、“立体的行動”をとることが多いのです。
つまり人や犬の通れぬ、道無きみちを進み、人が両手を挙げてバランスを取らないと渡れないような高いブロック塀の上に登ることが、猫にとっての日常であるということなのです。

人が寄り付かないような高い場所、腕が一本入るぐらいのわずかな隙間、幅15cmぐらいの手すりの上などで、窓から降り注ぐ木々の影の揺れを感じ、虫の羽音、遠くからやってくる鳥の鳴き声に耳を澄ませ、高い所から人や車の往来や近所の動物たちの行動をつぶさに眺めることが、猫たちの興味を誘うところなのかもしれません。

仕掛け作り

猫の行動パターンを観察しながら、それをもとに家のなかに様々な仕掛けを作りました。天井まで届く本棚が壁一面にあるのですが、棚の一部を張り出して猫のための踊り場にしたり、壁つたいに板一枚のキャットウォークを渡してロフトスペースへ移動できるようにしたり、玄関ドアを開けても簡単に外に出られないように扉を2重にしたり、などなど…。

遊び放題

猫たちが吹抜けの高いところにあるキャットウォークを全速力で渡る様は、熟練のピエロの綱渡りのようです。いつか落ちやしないかとヒヤヒヤしますが、そんな人間の勝手な心配も何くわぬ顔で、家の中を巨大なジャングルジムのように飛び廻ります。レンジフードによじ登ったり、2階へは階段からではなく吹抜けから上がったりと予想外の行動をとるのには驚きました…。猫たちにとっては自分の手足で体のバランスを保てる十分なスペースがあり、自分たちが柔軟に体を動かす環境があればそこが遊び場所であり、居場所なのかもしれません。

人も猫も仲良く

家が出来上がり、こちらが作った仕掛けどおりに行動してくれていると、「してやったり!」という気持ちなのですが、思いもしなかったところによじ登り、駆け回っている姿をみると、猫たちが家の中の最も心地良い場所や過ごし方を違った側面から教えてくれている気がします。家がますます気持ちよく、楽しい場所として機能しているようで嬉しくなりました。
私が遊びに行くと玄関までやってくる彼らの姿は、「ようこそ」と迎えに来てくれているかのようです。人と彼ら猫たちが仲良く元気に楽しく過ごしている姿をみると、とても安心した気持ちになります。