九州を中心に活躍している4名の建築家にご協力いただき、「建築家との家づくりとはどういうものなのか。」「ハウスメーカーが売る家とは何が違うのか。」などのテーマで、建築家との家づくりに興味のある方へ知識を深めていただく事を目的に座談会を企画しました。
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高田宏明
高田宏明アトリエ一級建築士事務所代表
http://www.k5.dion.ne.jp/~ht-ate -
陶山良雄
陶山設計工房一級建築士事務所代表
http://www.h7.dion.ne.jp/~suyamaar -
河﨑寛史
ケイデザイン一級建築士事務所代表
http://www.kdesigninc.com -
福田哲也
株式会社アーキタンツ代表
http://www.a-tanz.com
聞き手 フォルツァ北九州オフィス 田中、松原
建築家座談会 中編 〜納得できる住宅と建築家コンペ〜
田中
さて、実際にお客さんが家を建てようとするとき、「一体いくらくらいお金が掛るんだろう?」ということは一番悩まれると思うのですが。
福田
最初にだいたいの総予算が知りたい。というのは、自分が買う側になってみればありますよね。例えば「こういう家にしたい」という希望とともに「2,000万」という予算金額は建築家に伝えますけど大体の場合、その予算どおりになるという保障もなく、絵(設計)が進んで行きますよね。
そして「全体で2,100万円ですよ。」と出てくれば、お客さんも100万円の減額案に対してあまり我慢をしなくていいかもしれない。でも、2,000万と言っていたのに実際は3,000万で出てきたとき、一度想い描いちゃった3,000万の絵を2,000万にするのって、お客さんにとってみれば相当なストレスだと思うんですよね。
高田
お客さんの考え方次第ですけどね。設計するときに私が言うのは、「まずは要望を聞きましょう。ただ、全てを聞いていたら絶対予算をオーバーしますよ?それでも良いですか?」と。お客さんが、「それでもいい。」と言うかどうかですよ。それでも良いという人には2,000万の予算ですが、たくさんの要望を聞いた絵を描いてみる。
その後、FORZAのサポートであれば施工会社の相見積りが3社くらい出ますよね。
するとお客さんは3社の見積書を見て、「やっぱりこれくらいは掛かるんだ…。」と納得される。だから、そこから2,000万円にするのは仕方がないとあきらめが付く。
松原
お客さん自身が、「私の要望はこのくらいの金額なんだ。」と納得した上で、「じゃあ予算である2,000万にするのに協力しましょう。」となるのですね。
高田
そうそう。いわゆる“納得住宅”ですよね。
田中
ハウスメーカーなどは、お客さんに安心してもらうために「最初から金額がいくら」というのを見せるやり方ですよね。建築家とやってみたいという人は、自分の理想の家が「どのくらいの金額になるかを見てみたい。」という人が向いているということですか?
福田
理想と現実とのギャップをある程度理解して、整理できる人たちが我々建築家も理想ですよね。
河﨑

たまたま僕に声を掛けてくださったお客さんは、「何社も見積を取ってみましょう。」という人はいなくて、「信頼できる工務店と話し合って決めましょう。」というケースが多いんですよね。 僕はその工務店の得意・不得意を理解した上で、お客さんの希望の金額に落とし込んでいきたいので、僕としてはお客さんには“指名”で進めて欲しいんですよね、工務店も含めて。
先ほど予算の話がありましたが、僕は最初は予算を完全にオーバーするプランを作るんです。予算2,000万円でも平気で3,000万円くらいになっちゃう。だけど、それをお客さんと「一緒に絞り込んでいきましょう。」というのを前提にやっています。
田中
建築家の皆さんに、FORZAのひとつの売りである“建築家コンペ”について、ご意見を伺いたいです。
高田
まぁ、コンペがいいのかという話もありますけどね(笑)
例えば公共施設なんかのコンペでは、審査員がいて、プランもたくさん出されて、そのプランの良し悪しで決まって行くものなんですよね。
ただ、一般住宅の場合はプランを選ぶというより「設計者を選ぶ一つの手段」なんですよね。お客さんは、僕らのプロフィールとかホームページを見てもよくわからないし決めきれない。だからコンペで判断する、という流れになっているのだと思います。
陶山
純粋にプランで選ぶお客さんもいますけどね。ただ、「設計者を選ぶ手段」というのであれば、もっとお客さんとの面談を2回、3回と重ねて、こちらを深く知ってもらうというやり方もありますよね。僕らももっとお客さんの事を知りたいし。コンペだけではなく、そういうふうに面談を重ねるというのも一つの方法かと思いますね。
福田
以前のコンペで、奥さん、旦那さん、おばあちゃん、という3人家族のケースがあって、あの時は「奥さんの意見が強いんだろうな。」と僕なりに想像したのですが、1回の面談や希望要項だけで「じゃあ、奥さんの意見を最大限に取り入れよう。」と考えるのはなんだか失礼な気がして・・・。
確かに奥さんの意見は強いのかもしれないけど、おばあちゃんに対してもバランスを考えてあげないといけないのでは?とか、そういう事って何度か打合せしながらではないとわからないですよね。
でも、お客さんからすれば「建築家コンペというのがありますよ」って言われたら、「それは見てみたい!」となるのは自然だろうし。
田中
確かにお客さんの立場だったら、まずは色々な案を見てみたいっていうのはありますよね。
陶山
でも実際にコンペで決めてもらった場合、その後は結構スムーズに進むんですよ。僕だけの案じゃなく、3人とか4人の案を一通り見ているので「いろいろな案から選んだ」という覚悟みたいなものがあるんだと思う。
田中
お客さんが自分の目でそれぞれのプランを比較検討してますからね。
他にコンペのいい所はありますか?
陶山
建築家にとっては、仕事をするチャンスが何倍かになるというのはあります。
例えば、最初からお客さんに「高田さんでお願いします。」と言われたら、もう僕にチャンスは無いじゃないですか。でも、コンペの候補に選ばれると可能性があります。
高田
今の建築家コンペではプランと模型を作ってるけど、もう少し簡易な方法でイメージを伝えるようなやり方はどうなんだろう? 例えば、プロポーザル(技術提案)とか。そういったやり方でも建築家同士の差は歴然と出ると思うので、有効なんじゃないかなぁ。
河﨑
まぁ、僕は1ヶ月あっても模型は作らないんですけど。それもどうかと思うんですが。(一同笑い)
プランは真面目に考えるんですが、プレゼンの2日前くらいにならないと全てがまとまらないんですね。CGや動画は作りますが、さらに模型までってなると間に合わない。だから僕は“模型は作らない”と割り切ってやっています。
あと、FORZAのような住宅サポート会社と仕事をするなら「僕が作る建物のスタイルはこうだ!」と決めてやろうとは思っています。実際は割といろんなスタイルを作ることができるんですが、あえて「FORZAで仕事するならこのスタイルで。」と宣言しています。
だから、お客さんが僕のスタイルに合わないのに他の建築家さんとコンペをやるのはそもそも矛盾しているんですね。なので僕のスタイルに合うお客さんがいれば手を挙げますし、そうでないなら「お仕事はできません」と自分の中では決めています。でも、その方がより自分をわかってもらえるんじゃないかなと思っています。
高田
そういう「特色」というのは大事。ないといけない。
河﨑
本当は「みんな誰とも違う、誰のでもない、これは絶対あの人のだ。」というのがないと、コンペ自体も面白くならないと思います。「なんかスタイリッシュだけど、誰が作ったの?」となったら面白くない。だから、FORZAのコンペに出るなら「私はこのスタイル。」って決めていた方が面白いと思いますね。
田中
たしかに「陶山さんはこういうスタイル、高田さんはこういうスタイル」という風に、「河﨑さんだったらコレ!」というものがあると、サポートをしている側としても薦めやすいです。でも実際は「洋食もいいけど和食もちょっと食べてみたい。」みたいなケースが多いかなと感じます。
河﨑
「何を食べたいのか決めきれない、わからなくて迷っている」お客さんが多いんでしょうね。
でも、それがハッキリしているのなら最初からそれに合った設計事務所へ行きますよね。
一同
そうそう。
田中
そこはいろんなメニューがある定食屋さんのように、我々のような住宅サポート会社が迷っているお客さんのお手伝いができればと考えています。
お客さんとしては「色々なプランを見比べたい。」というのは必ずあると思います。「せっかく高額な家を建てるんだから見ておきたい。安心したい。」という欲求が。そういった意味では、一度で色々なプランを見る事ができる建築家コンペは魅力的だと思います。
陶山
FORZAへ相談に来るお客さんって、どんな建築家と仕事をしているのかを知って来てますか?例えば「高田さんに頼めたらなぁ。」と思うけど、直接本人に電話するのはちょっと…。そこでいろいろ調べてると、どうやらFORZAという会社と一緒に仕事をやっているようだ、といって来る方もいますよね?
田中
半々くらいですかね。
福田
直接、設計事務所へ電話を掛けてくるような方で前にあったのが、お客さん自らが「コンペします。建築家を4名、私が選びましたので出てくれませんか?」といきなり連絡して来ました。でも、「えっ??お断りしますっ!」(一同大笑)
例えばですよ、事務所まで訪ねてきて、主旨を説明して「こうなんですけど、どうでしょうか?」っていうならば少しは依頼者ご本人を見ることができるんですが、事務所に電話1本だけで資料送らせて、「あなた当選しました!4名に選ばれました。」って、「あなた何者!?」っていう。(一同爆笑)
そういう仕事は取れたとしても、あとあと話が揉めるのは分かり切っているなと。それならば最初から「お断りさせていただきます。」と。
高田
設計者を数人選んで「建築家コンペっていうのが魅力的ですよ。」と謳っているけど、今となってはイマイチ魅力が薄いのかなぁって考えるんですよね。
福田
それは建築家自体の「鮮度が下がっている」というのが一番の問題じゃないですか?
河﨑
そこ興味ありますね(笑)
田中
一番困るところじゃないですか(笑)
高田
でも、たぶん元はそこなんですよ。
福田
建築家を“大量に消費している”のが一つの問題だと思いますね。
誰でも手に入るものになってしまっている。
河﨑
なるほど。
高田
雑誌も結構な頻度で特集してたからね。一般の方もだんだん飽きてきたんですよ。
福田
“隠れ家的なお店”だった建築家が、今ではもう“路面店”出してるじゃないですか。(一同笑)
陶山
でも、それは建築家みんなが考えなきゃいけなかった。安売りするような、そんな出方はしない方がいいんじゃないかなと。「あそこに陶山というのが居るらしい。」くらいの方がいいと思う。
高田
紹介するホームページも増えて、みんな自分のホームページもあるからね。
何か特色があれば別だろうけど。鮮度が落ちてるんでしょうね。
陶山
隠れなきゃいけないのでは?(笑)
福田
FORZAは今隠れている逸材を探した方がいいですよ。
「この建築家見たことないでしょ!」みたいな。(一同大笑)
高田
もう、“建築家”っていう呼び方変える?(笑)