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  • 前編 〜家づくりの今〜
  • 中編 〜納得できる住宅と建築家コンペ〜
  • 後編 〜建築家 VS ハウスメーカー〜

建築家座談会

九州を中心に活躍している4名の建築家にご協力いただき、「建築家との家づくりとはどういうものなのか。」「ハウスメーカーが売る家とは何が違うのか。」などのテーマで、建築家との家づくりに興味のある方へ知識を深めていただく事を目的に座談会を企画しました。

聞き手 フォルツァ北九州オフィス 田中、松原

建築家座談会 前編 〜家づくりの今〜

田中

本日は皆さんお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。
現在、住宅業界の先行きが見えない事もあり、家づくり自体が景気の様子見の時期ではないかと考えます。ただ、この先国内の着工件数が減っていったとしても、一般の方々の持家志向というのは変わらないと思いますし、住宅への関心も依然としてあると思います。

昨今「建築家との家づくり」に関する情報はとても多くなったと思いますが、とある住宅雑誌の読者アンケートで「実際に家を建てたのはハウスメーカーである」とありました。これが現実とは思いながらも、どうすればもっと一般の方に建築家との家づくりを知ってもらえるだろうかと日々考えております。

もちろん皆がそれを望まれるとは思っていませんし、ハウスメーカーや工務店を望む方もいると思います。ただ、まずは知ってもらい、同じ土俵の上で比べてもらった方が家づくりの幅は広がると思いますし、「家づくりを楽しむ」という事がもっと身近な事に感じてもらえるのではないかと思っています。皆さんは建築家との家づくりが一般的に、どの程度認知されているとお考えでしょうか?

高田

ネットや雑誌でたくさん情報が出ているので、見ている人はもちろん知ってるでしょうね。全然見ない人は別でしょうけど。「家を建てたい」と考えた時、そういった情報は見るんじゃないですか。テレビの“ビフォーアフター”とか。

福田

あの番組の影響は強いと思います。「建築家なら画期的な収納を作ってくれる!」とかそのレベルの認識でしょうけど。家を造るというのは一生のことですから、“建築家という人達がいる”というのは、一般の方でも調べれば割と簡単に行きつく情報ですよね。

田中

では「建築家との家づくり」を知ってもらうには、その次の段階なのでしょうか?

福田

そこで「建築家=金がかかる」「自分たちの世界ではない」とパッとラインを引いてしまう人も当然いますよね。

田中

世界が違うと。

福田

「私たちのような一般的な家を建てるのに、建築家なんかに頼むもんじゃない。」と考えて、最初から選択肢にいれない人達はたくさんいると思います。

田中

それがいわゆる“建築家は敷居が高い”と言われるイメージなのでしょうか?

福田

一般の方は固定観念で、「建築費の他に設計料やデザイン料を取られるなんて」と考える。あと、最初から「建築家に依頼する身分じゃない」とか、「予算がない」とかも考える。そこでラインを引いてしまう人はいるでしょうね。

高田

そういう人は結構多いと思いますね。

福田

「建築家は良いんだろうけど私はいらない。私はやらない。」と考えるようですね。
よく冗談っぽく「お金があったらねぇ…是非お願いするんだけど」って言われる。(一同笑)そういう感じで最初から家づくりの選択肢から外される。

陶山

建築費以外に「設計料が取られる」という風に考えるんですかね?

福田

はい。だから(その分)家もきっと高くなるだろうと。
お金を持っている人たちのために設計をやっているんだろうという認識ですかね。

田中

(お客さんは)そういうお金の話は詳しく調べないんでしょうね。
ハウスメーカーも本体価格に“設計料”は入っているのに「全体でいくらですね。坪当たりいくらですね。」という大枠な金額で見積明細はあまり詳しくない。

福田

総額いくらかわかれば、全てわからなくていいんじゃないですかね。
あとは周りの人の予算を聞き比べて、「一緒くらいね。」とか「少し得したわ。」と安心する。トイレや断熱にいくらかかったとかは知らなくていい。そういう人は多い。

高田

あとは「面倒そう」ということですかね、煩雑になるんではと。
もっと便利に手間掛けずにゴールに行きたいと考える。

田中

“家を建てる”じゃなくて、“家を買う”という感覚ですかね?

福田

車を買うというような感覚ですかね。設計料を払える人たちでも建築家に頼まない人は結構います。そういう人たちもBMWやベンツを買うのはウェルカムだけど、建築家のところに行って面倒なことをするくらいなら、全体をフォローしてくれる人のところへ行って「予算1億あるから」と言えば手厚いフォローが受けられます。価値観の問題かもしれませんが、そういう理由から建築家のところへは行かないという人もたくさんいるのでは。

高田

あとはハウスメーカーや工務店もクオリティが上がってきているので、「私の理想の家は建築家に頼まなくても叶う。」と考えるのかもしれない。

田中

今は特にいろんなデザインを出している住宅会社がありますよね。

高田

4〜5年前に僕らが担っていたデザインは、もう今では街場の工務店がやってます。キューブ型とか和モダンテイストとか、デザイナーズ住宅とか。

福田

今では工務店もノウハウがありますからね。

高田

そこで間取りもある程度融通を利かせてもらえるならば(理想の家は)叶っちゃうんですよ。

福田

叶ってしまうならその方が良いですもんね。でも「やっぱりそれでも想いが叶わない・・・」と悩んでいる人たちしか建築家には辿り着かない。

田中

北九州も福岡と同じでなかなか良い条件の土地が無いのですが、市内のある所を200戸くらい造成したらあっという間に売れているんですよ。金額を聞いたら4~5千万円くらい。ハウスメーカーでいったらD社とかS社とかの、そこそこ高い家や土地なんです。

そういうのを目の当たりにすると個人的には悔しい。確かにお客さんが「ハウスメーカーは至れり尽くせりしてくれるから、それがいい。」という方はそれでもいいのですが、そこまで予算があるのなら、もう少し他の家づくりも考えてみませんか?と投げかけたいんです。

建築家との家づくりを知れば、「おもしろそう、話を聞いてみたいな。」と考える人もいると思うんですよね。

河﨑

家づくりが面倒くさい、と思っている人へ“建築家との家づくり”について多くを語っても、意識が変わる人って少ないと思うんです。

例えば外車を新車で買うとき「内装の色はコレで。」とか細かく選んで、半年後に船で送ってくるのをずっと待てる人と、とりあえず黒のセットが東京に在庫でありますよ、となれば、「じゃあそれで。」という人、それくらいの違いがある。

そういうふうに物を買うのに半年、1年待ってもいいよという人はなかなか少ないんじゃないですかね。ましてや家ならなおさらです。

田中

そこまで“待てない”ということですね?

河﨑

そう、打合せも面倒くさいしですね。例えばハウスメーカー大手S社とかは、車で言えばレクサスみたいなもんじゃないですか。クオリティ高いし、たぶん壊れないし、問題も発生しそうにない。お金があるなら皆そっちを買おうと考える。

陶山

「何でも一から決められますよ。」というのが有難いと感じる人は建築家に頼むし、建築家に依頼するお客さんは、かなりこだわりがある人が多い。そういう人じゃないとなかなか建築家には頼まない。でも、ハウスメーカーで契約寸前だったのに、僕たちのところに来たという人たちもいます。

理由は、お客さんがハウスメーカーに対して何か希望を言うと「それはできません。」とか「それはいくらアップします。」と言われるから「もう、やーめた。」となってしまった。
そこで、もう建築家の所へ行くしかないと。

福田

「いろいろ悩んで、たどり着いたのがここでした。」っていう・・・。

田中

それは選択肢として最初から比較しているわけではなくて、だんだん検討していくと建築家しかなくなったということですか。

福田

あちこちで悩んで、やっとこの人たち(建築家)が助けてくれるっていう・・・。(一同笑)

河﨑

でも、雑誌とかを見ると「あの先生の、あのデザインの家が欲しかった!」とか書いてあったりするじゃないですか、そういうふうに皆さんもお客さんから頼まれたりはしませんか?
「どうしてもあの先生の建物が良いから是非私にも造って欲しい。」ということで、直接声が掛かるというイメージを持っているのですが。

福田

そういうお客さんは昔から一定量でいますよね。それがある時期ブームの中で、メディアが「みんな気楽に建築家に頼めるよ。」と言い出した。で、皆さん気楽に建築家のところに行ってみたものの、結構大変そうだなと。

そこでお客さんは「確かにカッコいいけど、自分は絶対建築家じゃなきゃ嫌というわけではないし、そこまでの熱意もないし、面倒くさいし…。」ということに気付く。
で、パッと傍らを見ると、ある住宅メーカーが打ち出しているカッコイイ家がある。「あっ、これでいいじゃない!」となる。(一同笑い)

そういうふうに住宅メーカーのデザイン住宅を選ぶ人たちが増えて「建築家との家づくり」が淘汰されてきているのかもしれませんね。お客さんも「最初は建築家に興味あったけど、やっぱりこのデザイン住宅でいいや。」って考える。そういった状況を考えると建築家に頼む人たちは、昔からある一定量で変わらないのかなと思いますね。