ギャラリーレポート

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建築家/西岡 梨夏

ソルト建築設計事務所

三枚屋根の家

今回のギャラリーは建築家 西岡氏が設計した「三枚屋根の家/trois trois」。
「trois trois」とは”トワ・トワ”と読みます。。

施主様からの要望

「フランスの片田舎にあるような、素材感のある家造りをしたい!」というのが施主の要望でした。白い空間でありながらも、陰影を映し出す洞窟のような重さを求め、同時に、光や風といった自然を身近に感じられる空間を求めていました。
フランス調の建物をそのまま持ってきたのでは、日本の風土、街並みに適さないことから、プランニングや素材の選択、細かいデザイン部分に日本的・現代的なものを取り入れることで調整を行うことを提案し、計画がスタートしました。

配置計画

敷地は区画化された住宅街の角地で、南側には2階建の住宅が建ち迫っていました。そのため、一般的にある南側に庭を取るという配置をとらず、東側と西側の両方に庭を持つ配置としました。その結果、二方向に対しての視線・風の抜けが確保でき、室内空間に拡がりをもたらしています。
また、彩光については、屋根と屋根の間をずらしたサイドトップライトを設けることで、隣家からの視線を気にすることなく、間接的な柔らかい光が空間に降り注ぐようにしています。

プランニング

仲の良い4人家族が皆で過ごせるよう、ワンルームのリビングダイニングキッチンを提案しました。この空間は2Fへの階段、趣味スペースとしてのロフトが含まれた吹抜空間となっています。吹抜空間はともすると、がらんどうの落ち着かない大空間になってしまうケースもありますが、この住宅では勾配天井の高さをずらし、一部に木を貼って素材を変えることにより、それらを解消しています。
また、和室を建物の一番奥に配置することによって、「離れ」のような位置づけとしています。庭を介して、リビングと和室が視線が通ることで、適度な距離感を保ちながら家全体が一体となってつながります。

素材について

施主様の希望に、「建った時よりも時を経た方が美しい建築を。」という言葉がありました。
建築はどうしても、風雨、生活の中で何らかの跡が残っていきます。それらを「汚れにくく」することは、現在の技術の進歩により可能ですが、完全に「汚れなく」することは不可能です。
そうであれば、それらを汚れではなく、「時間の跡」として、「味わい」として建物の魅力がより増すような素材を選ぼうというのが、施主様との共通解でした。
具体的には、全て自然の材料で壁はすさ入り漆喰・土壁を用い、床と天井には無垢木材に天然オイル仕上としました。
漆喰、土壁、木のあらわしなど自然の素材を多量に使うと、空間の印象が重くなってしまう傾向がありますが、家具、手摺などの細かいデザインを軽く見せることで全体のバランスをとっています。

建物の名前

建物が完成間近になった頃、お施主さんから「建物に名前を付けてもらえませんか?」との要望を頂きました。「一緒に作り上げてきたこの家に、名前を付けてあげたい。HOUSE Oではそっけないので、愛着を持てるよう、この家を一言で現して欲しい。」とのこと。家に対する施主様の温かい気持ちをとても嬉しく感じました。
そこで考えた命名が「trois toits」。トワ・トワと読みます。
trois toitsとは、フランス語で3枚の屋根を意味し、3つのずれた勾配屋根によって空間が形造られたこの家にふさわしい名前だと感じました。トワトワという音の響きもこの家にピッタリだと思います。
これらの屋根と屋根とのずれから差し込む柔らかな光は、漆喰壁に陰影を与え、内部空間に奥行をもたらします。この光に包まれながら、ご家族が時間や季節ごとに光・風の移ろいを感じ、豊かに生活されることを願います。
(撮影:石井紀久)